台北を離れる9月30日は,どんな気持ちがするだろう? 立ち去りがたくて涙がこぼれてしまうかな? ずっとそんな想像をめぐらしてきたが,実際にその日を迎えてみると,不思議と寂しさは感じない。むしろ,何の始まりであるかはまだ分からないけれど,これから何かが始まるんだ,という気がする。
昨日,近所のスーパーへ最後の買い物に行く途中,ふだん通っている道の一本手前の小道を曲がってみた。行き止まりだと思って一度も曲がったことのなかった角だ。突き当たりまで行ってみたら,その道には先があった。くねくねと曲がりながら続く小さな路地には,小さなホステル,貿易会社,アートギャラリー,NGOのオフィス,旅行会社がぎっしりと連なっていた。
驚いた。人々が暮らし,働く気配が濃厚に漂うこんな空間が,私の家のすぐ隣にあったことに,まるで気がつかなかった。たぶん,今のマンションに3年住んでも,5年住んでも,私はあの角を一度も曲がろうとはしなかったろう。もう最後だから,と思って,気まぐれにいつもとは違う道を通ってみるその日まで,ずっとずっと,毎日同じ道を歩いたことだろう。
慣れというのはそういうことだ。だからこそ,ある場所を立ち去ることで訪れる,その場所との新しい出会いもあるのだろう。
15年ぶりに住んで,台北の新しい顔といくつも出会った。1年半の生活を経て,この町を離れることで見えてくる台北の姿も,きっとあるに違いない。今は,台湾で出会った全ての友人に,心からの感謝の気持ちを伝えたい。
MRT淡水線から見えるマングローブの林と観音山。私が台北で最も好きな風景のひとつ。 |
十数年前に住んだソウルで、似たようなことがありました。帰国後に懐かしさのあまり住んでいたマンションの近くを訪れてみると、「こんなところがあったのか!」と驚くばかりでした。
返信削除つるをさま, コメントありがとうございます。旅行ならあちこち足を伸ばすのに,住んでしまうとワンパターンの行動経路になってしまう,ということはよく起きますよね。ソウルも,味わいのある裏通りが多そうですね。
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