2012年4月7日土曜日

小さな緑のかんむり

台湾への赴任の前日に,つれあいが新しいカメラを買ってきてくれた。リコーのCX6という,やや太っちょのデジカメである。IXYとかもう少しスリムなカメラのほうがよかったんだがなぁ,と思ったが,カメヲタにカメラの悪口をいうとろくなことにならない。ありがたく受け取り,台北到着後はバッグに入れて毎日持ち歩いている。

そうやってカメラを持ち始めると,ふしぎなことに写真を撮りたくなってくる。気がついたら,カメラ無精の私が,台北到着後の1週間のあいだに200枚近い写真を撮っていたが,そのほとんどが,台北の町の緑を映したものだった。

15年前には,陰鬱な灰色のコンクリートの無秩序なかたまりのように思っていた台北の町だけれども,遅い春の到来を待たずして千葉から台北へとやってくれば,目に飛び込んでくるのはこの町の豊かな緑。この10数年のあいだに,都市計画の一環としての緑化もずいぶん進んだが,よくよくみれば,台北の町のいたるところで,実に多くの木々が,灼熱の夏にも湿気の多い陰鬱な冬にもめげず,激しい台風にも排気ガスにもめげず,もりもりと枝を伸ばしているのだった。

特に,見かけるたびに「おーいたいた,ご苦労さん」と声をかけたくなるのが,榕樹(ガジュマル)の木。夏になると,両手を広げて豊かな木陰をつくってくれるこの木は,台湾のシンボルだ。ごつごつしたぶかっこうな幹と長く垂れ下がる奇妙なひげは,仙人のよう。おもわず拝みたくなる。

国家図書館前のガジュマル並木


幹はなかなかぶきみな感じ


龍のひげ
もうひとつ,ついカメラを向けたくなるのが,台北の屋上でもりもりと枝葉を広げる植物だ。ガーデニングなんていうお行儀のいいものとはまるで違う,威勢のいい木々。秩序だった日本の都市の緑とはまるで違う,バイタリティのある生き物としての緑だ。

窮屈な鉢をわり,柵を越え,植えた人の計画(があったとして)なんてお構いなしに,わさわさと枝を伸ばす野性味あふるる緑の勇姿が,ここにも,あそこにも! 

台湾版ペントハウス(頂楼)の住人の庭。頂楼のデザインもなかなかナイス。
そごう横の大交差点でも上を見ると・・・
なぜそこに生える?


到着直後に止まっていたホテルの窓からも


ちなみに,私が住むマンションのてっぺんにも,外からよく見たら,立派な木がしっかり植わっていた。

高層階から台北の町を見下ろすと,多くの建物が,思い思いのかっこうをした小さな緑のかんむりを被っていることが分かる。台湾らしいその風景が妙に心にしみる。

2 件のコメント:

  1. おお、ブログ開設おめでとうございます!台北の木、独特の風情があるなあ、と思って見ていたのだけど、こうやって写真でコレクションしてもらうと、なるほど、こういう特徴があるのか、と納得です。
    写真を残すにはブログはいい媒体でしょうね。ましてや15年ぶりの国の生活ならなおのこと、15年前との変化をいろいろ記録できると思います。月刊?季刊?かもしれなくても…(笑)

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  2. yumeiziさん,コメントありがとうございます。

    敦化南路や仁愛路といった幹線道路をはずれると,台北は灰色のコンクリの固まりがびっしり並んだ町並みで,緑のイメージからはほど遠いですよね。でもよく目を凝らしてみると,その町のあちこちで,ど根性の木が身をねじくりながら,天をめざして枝を伸ばしています。それがなんともいえず台湾的な風景だなあと思い,写真をとりました。

    はい,せめて月刊程度の更新ができるよう,気楽に続けていきます!

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