2012年7月26日木曜日

迪化街での出会い:そぞろ歩き篇

社会学研究所の友人が,迪化街にもうひとつの仕事場を構えたという。仕事帰りに彼のオフィスに遊びにいき,夕暮れ時の迪化街を案内してもらって,この町の美しさに胸をうたれた。晴れた昼間の街並みも眺めたいと思い,週末に,写真をとりながらゆっくり歩いてみた。

威風堂々とした迪化街の街並み

台北は,西から東に向かって発展してきた町だ。観光やショッピングの最前線も,町の西側から忠孝東路・敦化南北路周辺の「東区」へ,さらには台北101周辺の「信義エリア」へと,東に向かって伸びてきた。

しかし,台北の町の本当のおもしろさは,町の西側にこそあると思う。なかでも迪化街を中心とする大稲埕エリアは,清朝時代から日本統治期を通じて台湾の商業の中心地として栄え,戦後は布問屋の集積地として繁栄したエリアで,日本・台湾・西洋の色合いが複雑に交錯し,レトロな美しい建築と懐かしい生活のにおいが入り交じった大変魅力的な街だ。ここを歩かずして台北の町の魅力は語れまい!

大稲埕歩きのメインイベントは,乾物屋の立ち並ぶ迪化街に沿っての散策である。通りに漂う漢方薬の香りをかぎながら店先に並ぶ茶葉やからすみを眺めるだけでも楽しいのだが,ここでの楽しみは建物見物にある。凝ったファサード,華麗なバロック式装飾,より新しい時代のシンプルな建物の輪郭といった,異なる時代から受け継がれてきた建築様式を見比べながら町を歩くのは実に楽しい。



いずれも現役の商店。
立派なファサード。屋号,家紋といったものは日本統治期に台湾に持ち込まれたという

一階は雨や日射しをよけて歩けるアーケード(「亭仔脚」)になっている


迪化街と直交する「歸綵街」にも乾物屋や食品店が集まっているが,華麗な建物が並ぶ迪化街とは違ってこちらはぐっとくだけた雰囲気だ。

大型扇風機でにんにくを乾かしていた(歸綵街)

迪化街の小さなランドマーク「霞海城隍廟」も必見だ。ここは縁結びで有名なお廟で,夕方や週末には若い男女が熱心にお参りしている姿が見られる。日本の雑誌でも紹介されたらしく,熱心に拝んでいる日本人女性のグループもいた。

縁結びで有名な月下老人がまつられている。


「2011年2月に日本演歌女王・小林幸子が縁結び祈願に来訪」「同年8月に8歳年下の熟男と結婚!」という新聞記事が。


「霞海城隍廟」の隣の「永楽市場」は台湾最大の布専業市場。小さな布問屋や仕立屋がぎっしりと軒を並べており,さながら迷宮のよう。

永楽市場は布のワンダーランド!
 
さて,迪化街には,ゆっくりくつろげる喫茶店やしゃれたお土産を買える場所が少ないのが,観光客の悩みの種だった。しかし,歩き疲れた迷える旅人にぴったりの新しいスポットができた。友人が連れて行ってくれた「永楽市場」の向かいにある「小藝埕」と,「霞海城隍廟」の三軒隣にある「民藝埕」だ。この二つのスペースには,たいへん魅力的な布製品・工芸品・本の小さなお店や,演劇スペース,喫茶店等が入っている。私はいっぺんでこの二つの空間のファンになってしまった。一歩足を踏み入れただけで,お店を営む人の情熱が伝わってくる。それでいて,決して押しつけがましいところのない,ゆったりとした雰囲気の気持ちのいい店が集まっている。

友人の研究スペースがあるのは,なんとこの「民藝埕」の3階である。そして,この「民藝埕」のなかを案内してもらうなかで,私はここを舞台に進行中のおもしろい冒険の舵取りをしている起業家兼社会運動家と出会うことになった。

この出会いについては次回の投稿で書くことにしたい。


友人の研究スペース 民藝研@民藝埕

くつろげる空間でもあり,集中できる空間でもある(@民藝研)

鰻の寝床状の細長い建物のなかでは,「外」と「室内」が緩やかにつながっている。@民藝研。

というわけで,この号は次回につづきます!

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