2012年12月13日木曜日

「子どもを生む花嫁さん募集します」


古新聞を整理していたら,こんなスゴい花嫁募集広告をみつけた。聯合報の一面右上,題字の真下に,赤字で婚婚婚婚婚婚・・・・と描かれた囲み枠があり,こう書いてある。
「結婚相手募集:①ある男性が「結婚し,子どもを生む」女性を必要としています。21-39歳,未婚のすらりとした美しい女性。②健康であること。③身長157センチ以上,ウェスト26インチ以下。色白,容貌端麗。④籍貫(父方の出身地)および学歴は不問(博士でも可),⑤(略)。⑥働いている人でも失業中の人でも構いません。」
続いて青文字で
「お医者さんによると,40-50歳(更年期)の女性は月経がなく,子どもを生むことができません。従って私は39歳以下の女性をめとって『子どもを生んでもらいます』」
 
とある。

聯合報 2012年10月27日 1面掲載。



こんな花嫁さんを募集しているご本人はというと,
「当人の条件①10数個の不動産,高級車を所有。貯蓄あり,安定した生活。②職業,結婚写真専門フォトグラファー,写真コンテストで7度の入賞歴あり。③身長170センチ,70キロ。健康,ハンサム,気品あり。(略)⑤道理をわきまえ,温厚で善良(他)。⑥本省人,63歳過ぎ(見た感じは40ちょっと),離婚歴有り,一人暮らし。」
だそうだ。




12月に入って雨の日が続く。それでも街角の緑はこの濃さ。



うーん,何ともえげつない衝撃的な募集広告ではあるが,ここまで堂々とされると,なんだかあっぱれ,という気になってくる。

しかし,「63歳過ぎだが見た感じは40歳ちょっと」という自己申告も,女性に「157センチ以上,ウェスト26インチ以下」を求める指定の細かさも,すべてが大変気になる記事なのだが,最も気になるのは,この男性が子どもを得ることを目的に女性を募集するという『借り腹宣言』をすることの意味だ。

「40-50歳の女性は月経がなく,子どもを生むことができません」という青字の説明が間違いであるように,39歳以下の女性ならば必ず妊娠すると決めつけるのも間違いだ。この男性は,めでたく39歳以下の女性と結婚しても,子どもを授からない場合には,結婚を解消するつもりなのだろうか? 望み通りに子どもが生まれたとして,妻と離婚することになったばあいに,母親に子どもの親権を持たせる可能性や,母と子どもの関係継続を認め尊重する考えを少しでも持ち合わせているだろうか?

妊娠・出産という身体機能を利用するために女性を「必要としています」というこの広告には--奇妙なおかしみとともに--心がざわざわと波立つものを感じずにはいられない。


杭州南路にて。


でも,このお金持ちでハンサムだという結婚写真専門フォトグラファーの彼も,願いをかなえてくれる女性を探し求め,結婚するまでのプロセスで,人と人とが一緒に生きていくということについて思い悩んだり,新たな境地にいたったりするかもしれないなー。いやしかし,この募集広告を見る限り,それを期待するのはムリそうだなー。

などとお節介きわまりない妄想にふけっていたら,ふと,タクシー運転手のCさんの悲しそうな顔が浮かんできた。

先日,いつものタクシー会社に電話をして迎えに来てもらったタクシーに乗り込んだら,二月ほど前に乗ったCさんの車だったのだ。

前回は,台北市郊外のあるメーカーまでの長い道すがら,Cさんと,20歳年下のベトナム人の奥さんの話を長々と聞いた。写真を見せてもらった奥さんは,華やかな南国美人。「どうしても孫の顔を見たい」というお母さんの願いで,ベトナムへのお見合いツアーに参加し,結婚して10年。二人の娘が生まれたが,奥さんは数年前から家を出てベトナム人の男性と暮らし始め,たまに帰ってくるだけだという話だった。

密室のなかでの一期一会(そうではなかったのだが!)ゆえか,Cさんは饒舌だった。「そろそろ離婚するほかないかと思うけれど,別れたくない」「でも,あっちがもう,うちのお袋のこともオレのこともイヤだというからね。姑嫁関係がとにかく最悪だから」と言う。お母さんとは別居できないの?と聞いたら,子どもたちの世話をするのがCさんのお母さんである以上,妻をとるか母をとるかと迫られたら,母をとるしかないという。

数ヶ月を経て,Cさんの車にまた乗ることがあろうとは思わなかった。さっそく「奥さんとはどうしました?」と聞いたところ,その後正式に離婚したという。「まぁ子どもが二人できたからいいんだけれどね」「多分,あっちはあの男と結婚するんだろうけれど,詳しく知りたくないね」。「人生は思い通りにいかないもんだねぇ。」

子どもを生んでもらうために探し,一緒になった奥さんへの未練を語りつづけるCさんの姿に,それぞれの思惑から国境を越えて結婚することとなった男女が,長い月日をともに重ねるなかで育んだのであろう不思議なえにしを思った。


0 件のコメント:

コメントを投稿